酸触歯とは・・・?
今日は「酸蝕歯」や「酸色症」についてお話させていただきます。
歯の表面の白く見える部分は、「エナメル質」と呼ばれる
体の中で最も固いとされている組織です。
エナメル質は非常に固いため、削ったり穴をあけたりするのは簡単ではありません。
歯の治療でもダイヤモンド粒子がついた器具を、約20~40万回転もの高速回転させ、水で冷却しながら削っているほどです。
そんな超硬質なエナメル質の弱点は「酸」。
これほど固い歯も、酸によって脱灰して溶けてしまうんです!
歯の表面が、pH5.5以下に長時間さらされると、次第に脱灰が起こり、エナメル質、象牙質なども柔らかくなって溶け、穴が開いていくのです。
虫歯の場合、プラーク(歯垢)に集まっている細菌が、砂糖などを餌に酸を出します。
一般的には、このように細菌が原因で歯に穴をあいてしまうことを「虫歯」と呼んでいますが
実は食べ物でも同じように口内が酸性の環境になると
歯の表面が溶けてしまったり、弱くなってしまうことがあるのです。
これを「酸蝕歯」と呼びます。
以前は職業的に酸を使う職業の方中心に見られたのですが、
最近は酸を含む飲食物が増えたため
生活習慣病としての酸蝕症が注目されています。
■柑橘系の果物
グレープフルーツ、レモン、ミカンなど
■一部の飲料・調味料
ジュースなどの炭酸飲料、ワイン、お酢など
文字通りですが、酸を含む「酸っぱい味がするもの」が
歯にダメージを与えやすい食べ物と考えられます。
ちょっと変わったところでは
酸性の強い温泉水などの飲用、口をゆすぐ習慣なども、酸蝕歯になりやすいと言われているので、注意しましょう。
酸蝕症の症状
酸蝕症は、歯の表面が溶ける病気なので、虫歯のような痛みなどの自覚症状が出ることはありません。
表面のエナメル質が溶け出すと、歯に白い斑点が見られたり、透明感が増したり、象牙質が透けて見えるなどの、見た目の違いが見られるようになります。
歯の表面が粗造で、弱く柔らかい状態です。
酸蝕症になった歯は虫歯に対する抵抗性も弱くなっているので
歯磨きなどの摩擦で、柔らかい部分が削り取られてしまうこともあり
この場合、知覚過敏が起こることも考えられます。
酸蝕症の自然修復・再石灰化
酸蝕歯として歯が溶けるには、いくつか条件があります。
歯は表面の酸性状態が続くと脱灰が起こり溶けやすくなりますが、しばらくすると唾液が酸性状態を中和し、溶けた部分を修復する「再石灰化」が起こります。
これは毎日、毎食後、意識していなくても自然に起きている現象です。
そのため酸性の食品を食べたからといって、すぐに歯が溶けて問題になるほどではないので、過度の心配をする必要はありません。
酸味のある食材は、体に良い食べ物であることも多いため、過剰な摂取でなければ、食事制限などを考える必要はありません。
脱灰が起こり、再石灰化で修復するのが間に合わない場合のみ、「酸蝕歯」として影響が現れてくると理解しましょう。これは虫歯ができる過程とほぼ同じですね。
また酸性、アルカリ性をあらわす単位に
PH(ペーハー)というものがあります。
PH7が中性で7より大きくなるほどアルカリ性が強く、
小さくなるほど酸性がつよいというわけです。
歯が酸により溶け出すのはPH5.5です。
これを臨界PHと言います。
この値より酸が強くなると歯が溶け始めます。
PHがこの値よりも上がると、
一度溶け出た物質が再石灰化を起こして再び固まり元に戻るのです。
では実際にはどのような値かというと、
たとえば午後の紅茶ストレートはちょうど臨界PH5.5でした。
お水ではボルビックが7.0でエビアンが最も高いph7.2でした!!
またコカ・コーラのPHは2.2、
ぽんジュースのPHは4.0でした。
これらは歯を溶かすために充分な値です。
しかし、ゴクゴク普通に飲む分には短時間なので、
ごく少量しか溶けません。
また再石灰化して治るので心配はありません。
問題となるのは、長時間とり続けた場合です。
1日中、酸の食品を飲み続けたり食べ続けたりすると、
大量に歯が溶けてしまい、
さらに再石灰化する暇もなくなってしまします。
さらに食品中に砂糖、果糖、ブドウ糖が大量に含まれていると、
虫歯菌も活動して酸をだすので、
ダブルパンチで虫歯が進行してしまうのです。
また、唾液の分泌の少ない人も中和されるのに時間がかかり
酸蝕が進行し易いといえます。
下のグラフは普段私たちがよく飲むソフトドリンクのPHの値です。
PHの数値が小さいもの程、酸性がつよいということです。
大体このような酸性のものを食べても、
30分から1時間位で唾液により中和され
口の中は中性になります。
酸蝕症の予防法
上記の歯の再石灰化による修復力を強化すれば、食べた直後に一時的に溶けた歯はすぐに戻るので、酸蝕症になることを防げます。
歯の再石灰化は、唾液によって促進されるので、食事の間隔が空いているほど効果が出やすいです。
一方で、砂糖などが含まれる間食があると修復が停止してしまいます。
さらに就寝中は唾液の分泌自体が減少するため、ほとんど修復が起こらないので
就寝前の酸性食品の摂取は、酸蝕症を進行しやすいと考えてもよいでしょう。
砂糖などの間食、就寝前の酸性食品を控えることが、酸蝕症のよい予防法と言えます。
唾液分泌で再石灰化を促進させる方法
より積極的に予防を行いたいなら、市販のガムなどで効果的に唾液分泌量を増やし、歯の再石灰化を促すという方法もあります。
その場合は砂糖などがあまり含まれない商品を選びましょう。
一例ですが、特定保健用食品に指定されている「リカルデントガム」などもよいでしょう。
噛むことで唾液の分泌を促し、同時に歯にミネラル分を補給することができるCPP-ACPが含まれているため、ガムでは初めてのトクホマークを取得しているようです。
ただ酸蝕症は、ガムを噛むとその衝撃が逆にエナメル質の崩壊を促進してしまうこともあるので
酸性食品を摂取直後ではなく、次の間食の時間がオススメです。
酸蝕症を上手に予防しながら、酸を含む健康食品もうまく楽しむようにしましょう。
歯を強くブラッシングするのはNG
力を入れてブラッシングすると、エナメル質を傷つけてしまう可能性があります。
歯ブラシは45度の角度で当て、150~200gの軽い力(毛先が広がらない程度)で磨くようにしましょう。
また、“ゴシゴシ”と歯ブラシを動かすのではなく、5~10mmを目安に1~2歯ずつ磨くことを意識しながら、小刻みに動かすようにしましょう。
歯磨き後は、完全に歯磨き剤を洗い流さない
歯磨きの後にしっかり口をゆすいでしまうと、歯磨き剤に含まれているフッ素などの有効成分まで洗い流されてしまいます。
理想的な歯磨きは2度磨きです。
1度目は歯についた汚れを落とすブラッシングで、2度目は歯磨き剤を歯に薄くコーティングする意識で、最後は軽くゆすぐようにしましょう。
しかし酸性のつよい食品を食べた直後は、
歯の表面のエナメル質が溶けかかってやわらかくなっているのです。
再石灰化がおこる前に激しく歯磨きをすると逆効果になり
やわらかくなったエナメル質を削ってしまう可能性があるようです。
なので
酸性の強い食品をとった後はまず水ぐらいでうがいをして、
しばらくしてから唾液によって口の中のPHが中性に戻ったころに
適圧で歯磨きすることが大切です。
どちらにしても寝る直前にはそういったものは食べないことですね。
正しい知識をもって美味しく楽しくご飲食をしていただきたいと思います☆
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